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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
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岡本さとる
satoru Okamoto

取次屋栄三5

茶漬け一膳

ただ今読書準備中(2024.5.4)760円祥伝社文庫20245

居酒屋お夏

春夏秋冬3

豆腐尽くし

ただ今読書準備中(2024.5.4)650円幻冬舎文庫20218

居酒屋お夏

春夏秋冬2

雪見酒

ただ今読書準備中(2024.5.4)650円幻冬舎文庫20213

居酒屋お夏

春夏秋冬1

山くじら

ただ今読書準備中(2024.5.4)650円幻冬舎文庫20202

居酒屋お夏10

祝い酒

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫201912

居酒屋お夏9

男の料理

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20192

居酒屋お夏8

兄弟飯

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20184

居酒屋お夏7

朝の蜆

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20176

居酒屋お夏6

きつねの嫁

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20171

居酒屋お夏5

縁むすび

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20166

居酒屋お夏4

大根足

ただ今読書準備中(2024.5.4)600円幻冬舎文庫20161

取次屋栄三4

千の倉より

文化31806)年の正月。栄三郎の師匠、岸裏伝兵衛は暮れに江戸に戻った。その後も栄三郎の手習い道場で過ごし続けている。正月10日、久しぶりに馬庭念流の剣術家、竹山国蔵を小石川の道場に訪ねた。かつて伝兵衛は国蔵の人柄に惚れて流儀にかかわらず教えを願った。二人は道場の見所に座り門弟が汗を流す様子を見ていた。すると一人の若者が目に留まる。15歳か16歳ぐらいの華奢な体の少年が剣を握っていた。「なかなかかわいいのがおりますな」と伝兵衛。笑みをこぼした国蔵が若者を入門させた経緯を語る。他の道場を紹介すると父親に言ったが、ぜひにともこの道場にという父親の願いが強く引き受けたという。3日に一度訪ねてきては汗を流している。笠間忠也。父は無役の浪人で源三郎。嫡男の忠也を名立たる剣士に育て上げ、無役の小普請組からの脱却を狙っていた。しかし伝兵衛の目には父の願いは子どもにはあまり伝わっているとは思えなかった

(2024.5.8)740円祥伝社文庫20243

取次屋栄三3

若の恋

江戸に初霜の日。秋月栄三郎は本所石原町にある旗本三千石・永井勘解由の屋敷に用人の深尾又五郎を訪ねた。永井勘解由の弟、浅草の永井内蔵助の嫡男・辰之助についての相談だった。まだ嫁取りをしていない若様が町屋の娘に惚れてしまったというのだ。辰之助は文武に優れ涼やかな男。放蕩の末に町屋の娘に入れ込んだわけではなかった。辰之助は月に数度向嶋にある国学者の講義を受けている。竹町の渡し場から船に乗る。講義を受ける身が供連れで歩くのは不遜であると辰之助はこの渡し場で供を帰してしまう。船を待つ間に休息する掛茶屋の娘に心を惹かれてしまったのだ。用人の大山甚兵衛は幼い時から辰之助を任され育ててきた。辰之助も「爺」と呼び甚兵衛を信頼している。心惹かれた娘のことを甚兵衛に打ち明けた。しかし、行く末は御家を継ぐ辰之助の将来を思い、身分違いの恋を認めなかった。とはいえ、これまで浮いた話がまったくなかった辰之助の思いを知り驚いた甚兵衛はどうしたものかと古くからの知り合いの深尾に相談してきたのだ。もとより武士と町人の間を取り次ぐ栄三郎はこの話を聞いて一肌脱ぐ覚悟になった

(2024.5.7)619円祥伝社文庫20114

取次屋栄三2

がんこ煙管

京橋の南東、水谷町にある手習道場。朝から昼過ぎまでは近くの子どもを集めた。それが終わると町の物好きが剣術を学ぶ場に変わる。師匠は秋月栄三郎。剣名をあげるつもりは全くなく、町の者に剣術を教える程度で技が鈍らなければいいと思っている。その道場に最近、厄介な入門者が現れた。掛け声勇ましく、大振りの木太刀を振るう。女剣士。大棚の呉服商田辺屋宗右衛門の娘、お咲だった。2ヶ月前に蔵前の閻魔堂の境内でごろつきたちに絡まれているところを一人の剣客によって救われた。剣客は松田新兵衛。栄三郎の剣友であることを知り、手習道場の地主である宗兵衛に新兵衛に用心棒を依頼するなどして近づいた。しかし、新兵衛はもとより堅物で剣術修行以外に全く興味がない。それならば新兵衛が没頭する剣の心に触れてみようと剣士として入門したのだ。剣客としての助言は惜しまなかったので、それに気をよくしてお咲はますます稽古に精を出していたのだ(2024.5.4)760円祥伝社文庫202311

居酒屋お夏

春夏秋冬7

明日の夕餉

清次が禄次郎とあったのは残暑が収まり始めた秋だった。目黒不動まで塩を買いに行った道すがら、口入屋の龍五郎が立ち話をしている相手が禄次郎だった。腹掛けに継ぎの当たった股引き、紺の上っぱりを引っ掛けた40絡みの地味な職人風の男だった。顔つきはにがみ走っていて口元には哀愁があった。飾り気はないが男としての優しさを感じた清次はたちまち親しみを覚えた。「禄さんは娘と二人で目黒に来たばかりで」龍五郎は言う。年齢も近い清次にこれからの付き合いを頼むと教えた。店に戻った清次は龍五郎のことをお夏に伝えた。与えられた仕事をしっかりやり、龍五郎を安心させてからでないと居酒屋へは来ないだろうと清次は思った。その思惑通り、龍五郎は数日経っても来なかった。龍五郎が店に来て「こないだの禄さんがよう、仕事が落ち着いたので店に行かせてもらうからよろしく伝えてくだせぇって言ってたよ」と告げた。清次は嬉しくなった。龍五郎によると禄次郎は娘のお京を連れて常陸国府中から江戸に出て来たのだという。人足をしていて差配の代替わりに伴って揉め事があり土地に居づらくなったのだという。ちょうど紙屑屋が仕分けを頼める者を探していたので禄次郎を紹介したのだと上機嫌で教えてくれた(2024.4.30)650円幻冬舎文庫20236

居酒屋お夏

春夏秋冬6

根深汁

野菜は売るが料理はできない夫婦。大鳥神社に近い百姓家に住む円太郎とおしののことだ。近くの農家から野菜を買って夫婦で売り歩いている。時々、お夏の居酒屋に寄って二人で飯を食い一杯やって帰っていく。何事にも控えめで仲睦まじい。野菜を売ってはいるが料理が苦手と二人は口を揃える。清次は野菜が残ったら持ってくるようにと気を使う。清次が料理をこしらえる。おしのを板場に呼んで作り方を教えてやることになった。馴染み客が来ると二人は昔話を始めた。幼い頃から時から兄妹のように育った。千住の外れの貧乏長屋だった。互いに気遣いながら成長した。女中奉公に上がったおしのを金貸しの爺が妾として面倒をみようという話があった。それを聞いた円太郎はおしのと手に手をとって逃げたのだ。若い2人は千住から離れてその日暮らしを始めたがすぐに泊まるところにも困るようになった。そんな時に出会ったのが口入屋の和右衛門だった。世話をしている寮番が亡くなったので2人でその代わりを勤めてほしいという(2024.4.27)650円幻冬舎文庫202212

居酒屋お夏

春夏秋冬5

鯰の夫婦

暑い夏の日、駕籠かきの源三は相棒の助五郎と杉木立で休んでいた。近くの寺から30過ぎの女が出てきた。「あれはおかじさんじゃないか」。女を知っている二人は「まだここに通っているのか」とため息をついた。おかじは下目黒町に住んでいて竹で笊や籠を拵えて生計を支えていた。亭主は猿三。夫婦で竹細工を作っていた。しかし、半年前に夫婦間に諍いがあって家を出たまま寺に籠ってしまった。寺男として働いているらしい。源三たちによってこの話がお夏の居酒屋に持ち込まれた。お夏は猿三の作る笊を店でも使っているのでずいぶん世話になってきた。料理人の清次がちょうど新しい笊が欲しかったところだったのでおかじに会いに行くことにした。猿三の作る笊と違っておかじの拵えた笊は少し出来が悪い。網目にムラがあったり、端からひごの切れ目がはみ出したり。清次が持って帰った笊を見てお夏はやれやれという顔になった。おかじがある程度、竹細工ができるようになると猿三はもう一つの仕事の鯰釣りに精を出すようになった。猿三が釣り場に行くと何故か大きな鯰の居場所がわかるのか大物が手に入った。ある時、息子の太郎吉を連れて鯰釣りに出かけ、悲劇が襲った(2024.4.20)650円幻冬舎文庫20224

居酒屋お夏

春夏秋冬4

鰻と甘酒

お夏の居酒屋に好い鰻が入ったので料理人の清次は背中開きにして焼いていた。みりんと醤油のタレが炭火に焦げて食欲をそそる香りを漂わせた。清次は好い鰻が入った時しかさばかない。それは辻売りをしている宗太郎を気遣ってのことだった。23歳の宗太郎は清次の弟子を自認している。貧しい棒手振りだった宗太郎は目黒界隈で辻売りをしていた♂が田舎に引っ込むのを知り、商いを受け継いだ。しかし、いきなり鰻をさばくことは難しい。そこでお夏の居酒屋で鰻を出す日には清次を手伝ってさばき方を学んでいたのだ。宗太郎は父親が好きで幼い頃から野菜の棒手振りをする父親について歩いた。父親はそれが嬉しくて天秤棒の担ぎ方や路傍の花の名を宗太郎に教えた。健気な宗太郎の姿は目黒の人たちに愛された。しかし、彼が13歳の時、父親は死んだ。母親はどこかのならず者と引っ付いて町から消えた。父親仕込みの棒手振りで自活できるようにはなっていた。母親に捨てられた心の傷を抱きながら、宗太郎は一新に商いに励んできた。昼下がりに居酒屋に来る宗太郎。遅めの中食をとりながら、清次の仕込みを見学、商いに出て、夜は清次を手伝って料理を仕込んだ(2024.4.17)650円幻冬舎文庫202112

居酒屋お夏3

つまみぐい

お夏は長兵衛とお豊の娘だ。長兵衛は酒屋を営みながら、世の中のためにならない悪を退治する男伊達を生業としていた。不遇な育ちで行き場を失くした連中を雇い入れ、武芸を仕込み、生業を確固たるものにした。使いに出たお豊が帰り道に返り討ちで殺された。勘定奉行のどら息子が遊びの帰りに町人の母子を痛めつけていた。それを許せず仲立ちに入ってどら息子の付け人たちに斬られた。即死だった。長兵衛は公儀には従順を装い、身内には仇討ちを誓った。一人仕事でどら息子を葬った。しかし、取り巻きの付け人たちは勘定奉行の父親が屋敷から放逐したので探し回るうちに長兵衛が亡くなった。それから20年を経て、髪結いの鶴吉が付け人の一人、奴の才次を見つけた。大きな船宿の主に収まっていた才次。お夏とかつての奉公人の清次、鶴吉は仇討ちの計画を練って背景を探った。すると千住の市蔵の命を受けて才次が暗躍をしていることにたどり着いた。お夏たちは川船で才次を襲撃して、お豊の仇討ちを果たした。その晩、お豊の好物だった玉子焼きをお夏は仲間にふるまった(2024.4.12)600円幻冬舎文庫20156

居酒屋お夏2

春呼ぶどんぶり

お夏の店。小上がりの片隅に春之助の姿があった。折敷には丼飯と具だくさんのけんちん汁、香の物が置かれていた。子どもの春之助には食べきれないほどの量だ。「子どものうちはたんと食べるんだ」お夏に言われて、春之助は「はい」と元気に答えて飯を旺盛に口にかきこんだ。十歳の春之助。店と通りをはさんだ向かい側の長屋に住む。亀井礼三郎という浪人の子どもだ。礼三郎は気がやさしいのが災いして、何をしてもうまくいかない。大名家を追い出されたときに妻は愛想をつかして実家へ帰ってしまった。それ以来、貧しい長屋暮らしが始まった。一膳飯屋で出会ったおせいという女が礼三郎を気に入って一緒に暮らすようになり春之助が生まれた。しかし、傘張り仕事しかできない礼三郎に苛立ちを覚えておせいもやがて春之助を残して姿を消した

(2024.4.8)650円幻冬舎文庫20151

居酒屋お夏

目黒永峯町界隈、行人坂を登り切ると「酒、飯」とだけ書いた幟を出す店がある。店主の女将、お夏はこめかみに膏薬、首には手拭い、寒くなれば襟巻き、黒襟のついた袖なし羽織を肩に乗せている。肌の色は黒く、化粧っけはない。年齢は全く想像できない。思ったことをすぐに言わないと気が済まない性質だ。店の床几に腰掛けて道ゆく人たちへ悪口雑言を繰り返す。女に対しても容赦はない。「名物のクソ婆がいるから来てやった」と近頃では肩で風切りながら渡世人を気取る新吉が店に来た。「お前みたいな偉そうな若造を呼んだ覚えはないよ」。お夏の啖呵に圧倒され、新吉は出直すことにした。常連客の龍五郎、不動の親方と呼ばれるところの口入屋の主人だ。新吉が店から出てきたところでばったり会った。お夏は龍五郎から新吉の育ちを耳にした。まだ12才にも満たない時に口入屋に仕事を求めにきたのが新吉だった。父親はなく、母は病がちだった。だから自分が働かなければいけないという。いくつかの働き口を世話したが、どこも長続きしなかった。12才までどこにも奉公に出ていなかったことが仇になった。読み書きができず、仕事の覚えが悪い、それを揶揄われて喧嘩になる。これが繰り返されたのだ。母親がやがて病で亡くなった。それ以来、新吉の姿がパッタリと見えなくなったというのだ(2024.2.17)650円幻冬舎時代小説文庫20146

取次屋栄三

野鍛冶の次男だった秋月栄三郎。武士に憧れて道場に入門したものの、権威と保身に明け暮れる武士の姿に嫌気がさした。小さな道場で町の人たちに護身に役立つように武術を教え、子どもたちに読み書きを指導していた。それだけでは暮らしに困るので、武家と町人の間を取り次ぐ、頼まれ仕事を引き受けるようになっていた。栄三郎が住む道場付きの貸家近くに染次の飯屋があった。辰巳芸者として名をはせた染次。身を引いて京橋近くの橋詰めに店を構えていた。盛り場でところの若者とやりあっていた又八を救い出し、栄三郎は家に連れ込んだ。30歳になるかならないかの又八は家事全般をこなすので栄三郎にはとても便利な家人となった。そんなある日、大坂時代の幼馴染、蓑助が江戸を訪ねて来ると文があった。大坂で手堅く商いの奉公を続けた蓑助は主人から信頼され、江戸店を任せている者の様子を見てくるように頼まれたのだ

(2024.2.14)760円祥伝社20239月新装版

八丁堀恐妻物語

4)恋女房

南町奉行所の隠密廻り同心の芦川柳之助。孫ほどの若い女房、おりんをもらった音羽の三喜右衛門に客人として入り込んだ。南町奉行の筒井和泉守の命による。雑司が谷一帯を取り仕切る音羽の三喜右衛門は貧しく行くあてのない者たちを拾いあげ、人殺しや盗みなどの道へ行かないようにしつけて賭場や岡場所で仕事を斡旋していた。その三喜右衛門が引退を考え始めたという。おりんと二人でのんびりと余生を過ごしたいと願い始めたのだ。柳之助は和泉守から、三喜右衛門引退につけこんで縄張りを奪い、悪事を企む輩がいないかどうかを確かめることが目的だった。柳之助は三喜右衛門の近くで過ごしながら、人としての魅力にひかれてゆく。妻の千秋は将軍影指南の家柄の血を引き、幼い頃から探索や戦いの業を磨いている。今回は壺振りとして三喜右衛門の賭場に入り込み、怪しい存在を探っていた。すると、若い武芸者が3人で賭場に乗り込み、刀を振るった。しかし、柳之助や千秋の反撃を受けて、若者たちは逃げてしまう。誰が何の目的で三喜右衛門の賭場にケチをつけようとしたのか、柳之助はかつて江戸を追い出された松三という破落戸にたどりつく(2023.12.29)690円小学館文庫202310

八丁堀恐妻物語

3)隠密夫婦

南町奉行所、定廻同心の芦川柳之助は与力の中島嘉兵衛から新たな使命を受けた。本所の日暮れ横丁に入って裏で取り仕切る存在を調べ上げよというものだった。多くの犯罪者が横丁に流れて行くことは分かっていたが、なぜかいつの間にかそれらが問題になることもなく解消されてしまう。番屋や奉行所が介在しなくても、大きな力が悪を持って悪を成敗する仕組みが出来上がっているのではないかと奉行所は睨んでいたのだ。しかし、表立って探索をしても誰も何も本当のことを言わないのは目に見えていた。隠密廻同心による探索が必要だった。千秋との結婚後、なぜかすぐに定廻同心から隠密廻同心へ勤めを変えられた柳之助は、妻の千秋とともに団子屋になって横丁に入り込むことになった。団子を棒に担いで売り歩きながら横丁の様子を柳之助は探った。その結果、夕暮れから多くの荒くれ者が集う「きよの」という居酒屋で訳ありの団子屋を装って情報を集めることにした

(2023.7.1)670円小学館文庫20234

八丁堀恐妻物語

2)銀の玉簪

隠密廻同心の芦川柳之助は大川の袂を探索していた。若い娘ばかり何人もが行方知れずになったと奉行所に訴えが出ていた。そんな時、大川にかかる大川橋に若い女が走ってきた。橋番が遮るのも寄せ付けずに一気に川に身を投げた。あっという間の出来事だったので柳之助には何もできなかった。柳之助の小物として一緒にいた三平は女が身投げをした時に近くまで来ていた腕に般若の彫り物がある若い男を追っていた。女の身投げと何か繋がりがあるのではないかと、咄嗟の判断で二人は目を合わせただけで行動していた。南町奉行所の定町廻同心、外山壮三郎は柳之助が隠密廻に配置換えになって見習いから定町廻同心に出世した。変装して仕事をする柳之助の仕事を表で支える役目を追っていた。身投げした女の素性を探ることは壮三郎に頼んだ。行方不明の娘の事件と身投げとの間に何らかの関わりがあるのではないかと睨んでいたからだ

(2023.5.20)680円小学館文庫202210

八丁堀恐妻物語

将軍家御用達の扇屋「善喜堂」。表の顔と違い裏の顔は徳川家を支える陰の役目を長く務めてきた。扇屋には誰にも知られない場所に武芸場があり主やその家族、奉公人を含めて日々精進を重ねていた。一人娘の千秋も幼い頃から武芸を習得し、老中の青山に命じられて危険な任務もこなしてきた。父親の扇屋の主、善右衛門は千秋を早くどこかの大店に嫁に出してこれ以上危険な任務に関わらせたくないと思っていた。そんな千秋が一目ぼれをしたのが南町奉行所の定廻り同心の芦川柳之助だった。大店の娘と武家の長男は本来、夫婦になることは困難だった。しかし青山老中は町方に千秋が嫁ぐことに興味を示し、二人の婚姻を認め南町奉行の筒井に二人の婚姻を認めるように手はずした。周囲の思惑を知らない二人はめでたく夫婦になった。そんな時、柳之助に新たな命が下された。隠密廻り同心の須賀が賊に襲われて怪我をしたので、代わりに探索を続けよというものだった。千秋は闘争本能に火をつけて柳之助を陰から支える役目を思いついた

(2023.6.28)660円小学館文庫20222