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秋川滝美
takimi akikawa

きよのお江戸料理日記
2

ただ今読書中(2024.5.18)アルファポリス文庫67020218

きよのお江戸料理日記
1

文政61823)年、師走、深川佐賀町にある孫兵衛長屋に一人の男が走り戻ってきた。奥から2軒目の引き戸を開けて飛び込んだ。男は清五郎。それを迎えたのはきよ。年が明けたら23歳になる。清五郎は三つ違いの弟だ。姉と弟は上方から出てきた。少し前にきよに頼まれて清五郎は乾物屋にぶどう豆を買いに行った。夕食を終えた時に、清五郎が急にきよ手作りの座禅豆が食べたいと言い出したのだ。買い置きがほとんど残っていなかったので清五郎が買いに出かけた。富岡八幡宮の境内に入ったところで清五郎は乾物屋の小僧が雨戸を閉めようとしているのを見た。店じまいだと焦った清五郎は大急ぎで駆け込んだ。するとそこに侍がいて刀を下げた側にぶつかってしまった。刀が武士の命であることに変わりはない。うっかりとはいえ、そこにぶつかった清五郎。その場で斬り捨てられても文句は言えなかった。しかし、その侍はお前がぶどう豆を煮るのか訊ねた。咄嗟に清五郎は「自分は料理屋「千川」の料理人で、これから座禅豆を作るところだった」と嘘をついた。清五郎は千川で働いてはいたが料理人ではない。料理を運んだり、客の注文を受けたりする奉公人だった。姉のきよは裏で野菜や魚の下拵えを手伝っていた。二人は大坂の油問屋、菱屋五郎次郎とたねの間に生まれた。きよは双子として生まれた。当時、双子は縁起が悪いと言われ、忌み嫌われた。特に男女の双子だったきよは心中の生まれ変わりと気味悪く言われた。このまま大坂で辛い思いをさせないために、五郎次郎は古くから江戸で料理屋を営む川口屋源太郎に二人を託したのだ(2024.5.18)アルファポリス文庫670202011