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多様化へ(2015.8.6)

文部科学省が全国の教育委員会を通じて、フリースクールの実態調査を実施した。


これはこれまでの公教育絶対主義の方針を大転換した大きな一歩だ。

増え続ける不登校への対策が、なんら成功していない事実が、大官庁を動かした。

実態調査の結果、想像通り、フリースクールへ子どもを通わせる保護者は大きな経済的な負担が強いられていることがわかった。一ヶ月平均で3万円以上の授業料がかかっていた。このほかに入会金や施設維持費が課せられているところもあった。

年間で約40万円。義務教育9年間で360万円。子どもが複数いれば、その人数倍かかってしまう。

不登校児童・生徒は、ほとんどフリースクールへ通っていない。

費用がかかりすぎて、保護者が通わせたくても、通わせられないのだ。

これは、10年以上も前から「わかっていたこと」であり、不登校問題に取り組む多くの人たちが訴え続けてきたことだ。だから、いまさらびっくりはしない。


同じ調査で明らかになったのは、フリースクールで働く人たちの待遇が悪いことだった。

施設の維持や給料のすべてを保護者からのお金に頼っているので、子どもの数でその都度予算が変わってしまう。行政による補助金はほとんどない。札幌市は上限を200万円として提供しているそうだが、ほかは皆無と言っていいだろう。

常勤職員を置くことができずに、ボランティア頼みという施設も多かった。

それでも、不登校になり、自宅にこもっている状態から、朝になれば学習道具を持ってフリースクールへ通う日常は将来へ生き方が広がっていく。多くの刺激が、学力や意欲を向上させ、自分を肯定していく。


2015年8月の国会で、政府は多様な教育機会の保証を認める法案を通そうとしている。

1997年に発足した「湘南に新しい公立学校を創り出す会」で、公立学校の新しいかたちとして「特別認可公立学校法」の設置を目指していた頃を思い出す。あれから20年近くが過ぎようとしている。

今国会は、戦争に関する法案が提出されて、そのことばかりに時間がとられている。もしかすると、多様な教育機会の保障を認める法案は審議する時間が確保されずに廃案になるかもしれない。そういう政治的な道具にならないことを切に願っている。


この文章は書下ろしです。

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