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ユッケによる食中毒事件(2011.7.28)

 焼肉チェーン店が食中毒を出した。
 5月7日までに4人もの犠牲者が出た。
 宮崎県で多くの牛や豚を殺処分にした記憶は、まだ鮮明に残っている。生産者が丹精込めて育てた牛や豚などの食肉が、加工や流通、あるいは調理の段階でおざなりになっていたとしたら、犠牲になった方ばかりでなく、必死の思いで生産している方々にも、とてもつらい思いをさせたことになる。

---Wikipediaより---
 韓国の料理であるユッケ(肉膾)。
 朝鮮語では、肉はユク(Yuk)、膾はフェ(Hoe)の発音で、連音化して「ユッケ」と聞こえる。「膾」は獣や魚の生肉を細かく刻んだもの(「なます」や刺身の一種)の意味である。
 この名前が示す通り、生肉を使った韓国式のタルタルステーキ様の料理である。生の牛肉(主にランプなどのモモ肉)を細切りにし、ゴマやネギ、松の実などの薬味と、醤油やごま油、砂糖、コチュジャン、ナシの果汁などの調味料で和え、中央に卵黄を乗せて供することが多い。ナシやリンゴの千切りを添えることも多く見られる。食前にはよくかき混ぜるのが良いとされる。

 ユッケは生肉を食するものであるため、動物の腸などから付着した腸管出血性大腸菌やサルモネラなどに感染する可能性がある。このため旧厚生省は「生食用食肉の衛生基準」(1998年(平成10年)9月11日生活衛生局長通達)により生食用食肉の規格や衛生管理について定め、これに沿った食肉に限り「生食用」と表示することとしている。しかし、これに基づく生食用食肉の出荷実績があるのは馬肉とレバーのみで、牛肉の出荷実績のある施設はなかった(2008年(平成20年)、2009年(平成21年))。この基準が遵守されず、多くの加熱用食肉が飲食店の自主判断で生のまま提供されているという。

 毎年、20件ほど食中毒が発生しており、広く知られたものでは2008年に炭火焼肉店でカンピロバクターによる食中毒が発生した事例がある。
---ここまで---

 そして、2011年4月29日。
 富山県砺波(となみ)市の焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす砺波店」で、21日に家族とともにユッケなどを食べた10歳未満の男児が食中毒で死亡した。

 富山県砺波(となみ)市の人口は、49,470人(男:24,021人 女:25,449人)で、世帯は15,438世帯。市役所のホームページでは次のように紹介している。
「庄川の流域に開けた扇状地、砺波平野。
名水が潤す豊穣の大地は強靭な増山杉、黄金色の稲穂、色鮮やかなチューリップを育み、日本の原風景を彷彿とさせてくれます。また、カイニョと呼ばれる屋敷林の中、切妻屋根アズマダチの農家が、碁石を散りばめたように点在する散居村は春から夏は萌える緑、秋は黄金、そして冬は銀白のじゅうたんと四季折々、美しい田園風景を見せてくれます。
古き良き歴史と時代の躍動感が、人々の暮らしの中に脈々と息づき日本有数の住みよさを誇るまち。
新しい人の和、まちの和が、いま、水と緑の大地に広がっていきます」

 砺波市は、観光が産業の中心らしいが、チューリップの生産も盛んのようだ。
 そんな北陸の小さなまちに、全国から注目が集まったのが、食中毒騒動だ。

 4月21日(木)。
 砺波市となみ町の焼き肉店「焼肉酒家えびす砺波店」を家族とともに訪れ、ユッケなどを食べた10歳未満の男児が、24日におう吐や下痢などを訴えて入院。27日にO-111が確認された。29日午前11時過ぎに、入院先の病院で死亡した。
 19-23日に同店を訪れた1-70歳の男女24人が食中毒の症状を訴え、うち21人が29日までに入院した。入院者のうち死亡した男児を含む6人が、重い合併症を起こす可能性がある溶血性尿毒症を発症した。

 4月27日(水)。
 福井県福井市の焼き肉店「焼肉酒家えびす福井渕店」で食事をした6歳の男児は下痢、血便などの症状で4月21日に入院。O-111が検出され、腎臓障害などを引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)の疑いで重症となり、27日に死亡した。男児は発症前、福井市内の同チェーン店で食事をしていたことがわかっている。

 5月2日(月)。
 富山県警が、業務上過失致死傷容疑で砺波署に捜査本部を設置した。

 5月3日(火)。
 福井県警が、業務上過失致死傷容疑で福井南署に捜査本部を設置した。

 5月4日(水)。
 「焼肉酒家えびす」で発生した集団食中毒で、富山県の店舗で23日に食事した後、食中毒症状で入院していた40代の女性が4日午前、死亡した。同チェーンの食中毒での死者は3人目。
 富山県によると、女性は4月23日、同チェーン砺波店(同県砺波市)でユッケなどを食べ、27日に血便などの症状で入院。30日から意識不明になっていた。
 富山、福井両県警は、業務上過失致死傷容疑で合同捜査本部を設置した。

 5月5日(木)。
 4日に亡くなった女性ほ家族で、同じ店でユッケを食べ食中毒症状を訴え入院していた70歳代の女性が5日の朝に死亡した。
 富山県生活衛生課によると、女性は4月23日に砺波店でユッケなどを食べた。26日に下痢や腹痛を訴え、27日に入院。その後、溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、5日朝死亡した。
 女性からは腸管出血性大腸菌O-111が検出された。同店の他の利用者からもO-111が検出されていることなどから、同課は同店での飲食が原因と判断した。
 女性は、4日に死亡した40代女性の家族。2人は家族5人で同店で食事をした。ほか3人のうち2人が食中毒の症状で入院しているという。
 同チェーンでは、砺波店でユッケを食べた富山県高岡市の男児(6)が4月29日に死亡。27日には福井渕店(福井市)で飲食した男児が死亡し、横浜上白根店(横浜市)でも女性1人が入院した。
 厚生労働省によると、富山県内の店で食事し下痢や腹痛などを訴えたのは、死亡した3人を含め70人。福井、神奈川両県と合わせて79人に食中毒の疑いが持たれ、死亡した4人のほかに23人が重症化している。同省は国立感染症研究所の専門家3人を現地に派遣し、5日に調査を開始。患者の発生状況やチェーン店の衛生管理状態を調べる。
 神奈川県警は、業務上過失傷害容疑で旭署に捜査本部を設置した。

 5月6日(金)。
 富山、福井両県警合同捜査本部は、チェーン店経営会社、卸業者などを家宅捜索した。その結果、死亡した4人が「福井渕店」「砺波店」で飲食した日に計307食のユッケを販売と判明した。

 最初の犠牲者が4月27日。5月5日までの約一週間に4人もの方が、同じ食中毒症状で死亡した。

 焼き肉チェーン店「焼き肉酒家えびす」に牛肉を販売した食肉卸業者「大和屋商店」(東京都板橋区)では7日午前までに、腸管出血性大腸菌が検出されていないことが、合同捜査本部への取材で分かった。
 合同捜査本部は今後、同チェーンや同商店から流通や調理の状況を聴取するとともに、患者から検出された菌を詳しく鑑定する。また、細菌学者らから意見を聴くなどして、感染経路の解明を進める。

 問題の食肉は、どこの工場で加工されたのだろう。
 そして、その食肉はどんな状態で、福井県や富山県に運ばれていたのだろう。

---Wikipediaより---
 腸管出血性大腸菌(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん、enterohemorrhagic Escherichia coli:EHEC)とは、ベロ毒素 (Verotoxin=VT) 、または志賀毒素 (Shigatoxin=Stx) と呼ばれている毒素を産生する大腸菌である。
 このため、VTEC (Verotoxin producing E.coli) やSTEC (Shiga toxin-producing E.coli) とも呼ばれる。この菌の代表的な血清型別には、O157が存在する。
 腸管出血性大腸菌による感染は、べロ毒素産生性の腸管出血性大腸菌で汚染された食物などを経口摂取することによっておこる腸管感染が主体である。また、ヒトを発症させる菌数はわずか50個程度と少なく強毒性を有するため、二次感染が起きやすく注意が必要である。また、この菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残し腸に達する。
 生の牛肉やレバーの摂食で感染リスクが高いともいわれている。
 大腸菌は、耐熱性菌体抗原であるO抗原160種類以上と、易熱性の鞭毛抗原であるH抗原60種類以上によって分類される。

O抗原
ベロ毒素を産生することのあるO抗原としては、O1、O2、O18、O26、O103、O111、O114、O115、O118、O119、O121、O128、O143、O145、O157、O165などがある。そのうち、O157によるものが全体の約80%をしめる。
H抗原
上記で示したO抗原であっても、H抗原が異なる場合等はベロ毒素を産生しないものがある。
したがって、腸管出血性大腸菌などの血清型別を表記する場合には、Escherichia coli O157:H7などと表記する。

 腸管出血性大腸菌は、軽度の下痢・激しい腹痛・頻回の水様便・著しい血便、などとともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで、様々である。
 感染患者に、性別・年齢等有意な差はない。
 感染の機会のあった者の約半数は感染から3-5 日の潜伏期の後に激しい腹痛をともなう頻回の水様便となる。多くは発症の翌日ぐらいには血便となる(出血性大腸炎)。発熱は一過性で軽度(37 ℃台)である事が多い。血便になった当初には血液の混入は少量であるが次第に増加し、便成分の少ない血液がそのまま出ているような状態になる。有症者の6-7%は下痢などの初発症状発現の数日-2週間(多くは5-7日後)以内に、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)、や脳症などの重篤な合併症が発症する。溶血性尿毒症症候群を発症した患者の致死率は1-5%とされている。
 重症合併症の危険因子としては、乳幼児と高齢者及び血便や腹痛の激しい症例が挙げられているが、それ以外でも重症合併症が起こる可能性がある。

 ベロ毒素(ベロどくそ、verotoxin)とは、腸管出血性大腸菌(EHEC, enterohaemorrhagic E. coli)が産生し、菌体外に分泌する毒素タンパク質(外毒素)である。一部の赤痢菌(志賀赤痢菌、S. dysenteria 1)が産生する志賀毒素(しがどくそ、シガトキシン)と同一のものであり、志賀様毒素(しがようどくそ、shiga-like toxin)とも呼ばれる。真核細胞のリボソームに作用して、タンパク質合成を阻害する働きを持つ。腸管出血性大腸菌や赤痢菌の感染時に見られる出血性の下痢や、溶血性尿毒症症候群(HUS)、急性脳症などのさまざまな病態の直接の原因となる病原因子である。
---Wikipediaからの引用はここまで---

 大地震の後の原発事故といい、安さが売りの焼肉屋での食中毒といい、日本の経済活動は全体的にひとびとの安全や安心よりも、「コスト」とか「利益」という数字に表される価値を優先してきたのではないか。
 事業仕分けという言葉で象徴される無駄の一掃セール。
 たしかに税金を無駄なことに使うのは困るが、本当は必要なことまで無駄扱いにされてはかなわない。
「いつ起こるかわからない大地震のために、莫大な予算を使って大防波堤を造るわけにはいかないだろう」
 原子力行政や原子力研究のトップに立つひとたちが、これまで大声で叫んできたことだ。
 その結果、町ごと避難を余儀なくされたひとたちは、これから何年も安全な生活や安心な毎日を送ることができなくなってしまった。
「たまには家族みんなで焼肉を食べよう。いまは安くてもおいしいお店があるから、そこに行こう」
 半永久的な不景気を生活者に押し付けた自民党公明党政権のツケで、いまの民主党政権は貧乏くじばかりを引かされている。ひとびとはおいしくて高級な肉が食べたくても、安い給料ではそういうお店には行けないのだ。だから、安くておいしい店ならば喜んで行く。
 どうして、こんなに安くできるのだろうとは考えない。安全を切り売りして、価格を下げているとは気づかない。
 その結果、いのちを奪われる。

この考察はウエイ6586-6589で紹介しました。

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